「香港情報」の研究―中国改革開放を促す〈同胞メディア〉の分析



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「香港情報」の研究―中国改革開放を促す〈同胞メディア〉の分析

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ダイナミックな意欲作

博士論文を中心とした本書は、○と□を是としてその中間領域の△を「おきて破り」として排除しがちなアカデミズムにあって、「香港情報」を切り国に香港と中国の情報メディア問題を、国際コミュニケーション研究の一環として取り組んだ意欲策といえる。もともと「香港情報」とは日本での造語だが、著者が序章で強調するとおり、本書では「香港発信の中国情報」という広い意味で用いられており、まさに「△」の領域に属する。世界的にユニークな存在であり続けているその「香港情報」(香港発信の中国情報)の形成と発展について、日刊紙『明報』、『サウスチャイナ・モーにグポスト』はもちろん、チャイナウォッチャーには有名だが、その実態はほとんど知られていなかった『争鳴』や『七十年代』(『九十年代』。廃刊)等の雑誌をも視野に入れて詳述しており、その資料価値は高い。個別の新聞や雑誌の紹介にとどまらず、それら「中国観察メディア」が生成した香港、中国の政治的・社会的背景をも正確に書き込んでいる。中国のメディアそれ自体の研究は増えているが、情報メディアを導管とする中国・アジアの全体的な社会研究はなお少ない。本書は、そうした研究史の先頭に位置づけられる作品と言うのがふさわしい。いくつか校正ミス(校正不足)があるのが残念。
意欲的だが、推敲不足で荒削りな博士論文そのまま

課程博士の論文としては、頑張って書いたことは評価したい。しかし、正直、読みにくい。博論であるがゆえに求められた学術性が、本書では残念ながら中途半端なまま完成していない。つまり、概念の定義が曖昧ななな、無理に議論を進めている。読みにくさの最大の原因はここにある。
せっかく出版するなら、以下のいずれかを選択してほしかった。
(1)学術書として完成させる。
(2)博論では無理に装ったアカデミズムを脱ぎ捨て、読者フレンドリーに徹する。

具体的な問題点を以下に指摘したい。

著者も認めるとおり、「香港情報」(中国発の香港情報)は日本人の造語。なのに「香港情報」が客観的に存在するかのように論じようとしている。ここに無理がある。むしろ、日本のマスコミの中国報道の体制や香港での情報収集などに焦点を当てるべきではなかったのだろうか?

「香港情報」ではなく、香港情勢の解説にスペースを割いている。そのため、論点が拡散し、論旨の一貫性を追いにくくしている。

さらに、香港情勢に対する解説には不正確な部分が多すぎ、本書の実証性を大きく損ねている。アジア政経学会機関紙『アジア研究』の書評は、グローバル化が返還後の香港を規定するという本書に対して「首をかしげる」として批判している。だが、「首をかしげる」べき記述はこれ1点には限らず、随所に見られる。

おそらく、著者本人に会うことが出来れば、さまざまな貴重な見聞を聞くことができるだろう。しかし、見聞の豊富さと学術論文における論理的一貫性は、必ずしも一致しない。有職者ゆえに論文の推敲にかける時間がなく、出版に踏み切ったのだろうが、後何年間か研究に専念して推敲していたなら...と思わざるを得ない。



芙蓉書房出版